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豚飼雑感2015年10月
のんびりしたり、結局急いだり

 スコップと一輪車で種豚舎の掃除をしているところなんて今はもうあまりないだろうな。普通、妊娠期間中の母豚は幅60cm×2m位の狭い柵の中で立って寝て、餌食って糞してを繰り返している。歩いたり向きを変えたりはできない。その狭い柵に入って餃子のようにズラリと並べられているので糞の掃除も直線的で楽だ。しかも大抵、尻の所はコンクリート製のスノコになっていて、下に落ちた糞を機械が掃除してくれるので、そもそも母豚の糞を人間が掃除する必要はほとんどない。
 しかしうちは違う。母豚は妊娠期間中でも歩けるようになっている。数年前改修した時、その方が良いに決まっとるという根拠のない自信から、わずかばかりの動くことのできるスペースを設けてやったのだ。実際それで豚たちがオー、スバラシイと喜んでいるかどうかは分からない。でもたまに激しいケンカがあったりはするものの、なんとなくのんびりやっている。そして豚がのんびりやっているかわりに人間は掃除に忙しい。
 朝晩一日2回。作業時間は1回約45分。80頭分の糞をかき集めては一輪車で運ぶ。1日で一輪車4杯。1日に一輪車で糞を運ぶ総距離は約200m。1年で730回掃除するので、146km一輪車で糞を運ぶ。いったいどこへ行くのかという気にもなるが、やるしかないのでやる。次の仕事を考えたり、機械で掃除するようにしときゃよかったなとぼやいたり、ラジオを聴いたり、家族のことや、誰かのことを思ったり、歌ったり、一人で思い出し笑いしたり、あたりまえの事さえよく分からなくなってきた世の中のことを考えてみたり、のんびりしたり結局急いだりしながらやる。あたりまえの事をあたりまえにできるよう、やるしかないことをやる。


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豚飼雑感 | 21:46:19 | トラックバック(0) | コメント(0)
豚飼雑感2015年6月
秘訣
 
 すえっこのひなたが3度目の春を迎えると、「ママはやまおかほいくえんでおしごとで、ひーはほいくえんでおるすばん」という事になりました。妻は13年ぶりに保育士に復帰して、9年ぶりに週に一度は豚舎の仕事をすることになりました。年とったように思われるから3年ぶりぐらいにしといて、とつぶやいていますけれど、実際あっという間。
 種豚舎の掃除と、出荷の後に空いた豚房を掃除して洗ってもらうという100%肉体労働を手伝ってもらうことにしました。掃除は一輪車とスコップで。洗うのは高圧洗浄機で。「洗うのは気をつけないとお返しが飛んでくるから」と親切にアドバイス。洗浄を始めて10分くらいするとなんか悲鳴が聞こえて機械が止まりました。アドバイスを理解したようです。
 しばらくして様子を見に行くと、妻は「どう?きれいになったでしょ」と言うので、洗った豚房のことなのか、それとも返り糞でお化粧した彼女の顔のことなのか、どっちのことかと思ったけれど、どっちにしろ「すばらしいよ」と答えておくのが夫婦円満の秘訣です。
5月の末、9年間豚舎で飼っていた犬のビーが死んでしまいました。長男が2歳の時もらってきた犬でした。あまりいい飼い主じゃなかったなぁと思いながら穴を掘りました。
 この頃は豚が死んだ時にも、あまりいい飼い主じゃなかったなぁと思ってしまいます。何%くらいはしかたないという考えがあるのも事実です。でも死んでいく豚に「しかたないんだ」とは言えません。この辺の気持ちと、その辺の考えが円満に行く秘訣があったら教えてほしいものです。


豚飼雑感 | 21:33:41 | トラックバック(0) | コメント(0)
豚飼雑感2014年10月
長靴を履いて、豚と共に歩む

 そして妻はスマホにのりかえ、夫は一人ガラパゴスに取り残されたのだけれど、その携帯も調子が悪いらしく、この頃豚舎では電話があまり通じない。屋根の上なら通じるかもしれないと試しに上ってみたけれど、結局通じないまま切れてしまった。やれやれとため息ついたけど、ああ、なんてきれいな夕焼け。
 屋根の下のいろんな仕事ちょっと忘れて、電話のこともちょっと忘れて、屋根の上でちょっと立ち止まる。みんなで張り替えたちょっと雨漏りのする屋根だなぁとか、地球の上のどこからでも夕焼け見えるのかなぁとか。
“地平線に沈むかと思った夕日が、そのまま朝日となって昇ってしまう”星野道夫さんがアラスカの夏について書いた文章がふと思い出される。コヨーテという雑誌で最近読んだ。現れたり消えたりしているのは太陽ではなく僕らの方なんだという実感が湧いてくる。
 地球という大きな船の一隅に、屋根を張っては豚を飼い、うろうろ歩き回っては日が暮れていく。ただそれだけの毎日だけど、誰もが太陽の周りをうろつきながら長い旅をしているといえなくもない。それぞれの土地で、それぞれの季節の中で。たとえば僕なんかは長靴をはいて、豚と共に。


豚飼雑感 | 15:15:02 | トラックバック(0) | コメント(0)
豚飼雑感2014年6月
ウィルスで、雑然として

 世界はウィルスが蔓延している。ポールマッカートニーさんだって入院だ。生物なんだか何なんだか、詳しいことは知らないけれど、僕も割りと仲がよく、しょっちゅう風邪をひいている。
 豚を飼っていると、本当にあの連中とはうんざりするほど付き合わされる。インフルエンザ、日本脳炎、口蹄疫、PCV、PRRS、AD、PPV、TGE、TPP…そして今問題になっているPED。幸いにもまだ僕の農場には入ってきていないけれど、もうすぐそこまで来ているので恐ろしい。特に子豚がこの病気にかかると、ひどい下痢をおこし、致死率は50%にもなることがある。去年はアメリカで、そして今年は日本で大流行。日本だけでもすでに20万頭近くの豚の死亡が報告されている。これが人間の病気だったらどうなることか…。
 ウィルスと言えばたいてい悪者なんだけど、中には良い奴もいるのだろうか?もう少し大きな細菌の類では良い奴もいる。もっと大きな人間の類でも、良い奴はいる。良い奴らだけと付き合いたいものだけれど、そこかしこに悪い奴らがいるのも事実で、呼んでもないのに寄ってきたりする。類は友を呼ぶというやつだろうか、もしかして。
 いずれにせよ、われわれは目には見えない細菌やウィルスの微妙な変化と、その働きによって、大いに振り回されている。しかし本当に健康な人達は、こういった目に見えない小さい奴らとの付き合い方が上手いと思う。農業でも有機農業や自然農として発展しているが、もともと土から切り離されて発展してきた養豚ではそういった考えはまだまだ乏しいのが現状だ。
 そんな折にゴーバルでバスク地方の養豚についての話を聞く機会があった。試食もさせてもらったけれど、バスク豚が1位で、ボクノ豚が2位といったところだろうか。バスク地方で昔から飼われていた在来種の豚を、その地域で作られた穀物を餌にして、広い山林で木の実を食べながら、ゆっくりと育った豚が旨いに決まっている。豚を飼っているおじさんもいい顔で、消毒と投薬に追われてやつれた顔をしてはいない。そのバスク豚も以前は絶滅しかかっていたものだという。単に旨いだけでなく、バスクに生きる人達の誇りがしみこんでいるのだ。
 串原で養豚にかかわるようになって10年になる。なんかまだスタートラインに立ったばかりという感じもするけれど、そして今の僕の心境に合わせて雑然とした文章になったけれど、はい、風邪ひかないようにがんばります。


豚飼雑感 | 22:57:15 | トラックバック(0) | コメント(0)
豚飼雑感2014年3月
蛙の弁明
 
 春は曙という人もあれば、春眠暁を覚えずという人もあって、世はさまざま。そんでもってこのぼくは相変わらず毎日あくせく働いて、夜明けのあくびと夜更けのあくびを繰り返している。おっと、まるで働き者の様な事を書いてしまったけれど、実はナマケモノだと思う。その証拠に毛深い。実際、どんなに忙しく動いても、地球の上から眺めて見れば、ほとんど動いていない。ナマケモノと大して変わらない…。
 だいたい忙しい時は井戸の中の蛙になっている。一人豚舎で仕事をしている時間が長くなると、そう思えることがある。見上げれば空は深い。ほめられたことではないけれど、責められるべきことでもないだろう。蛙は海では生きられないのだから。 
 蛙の弁明。「おれたちみんな丸ごと一つの地球なんだ。だからそれぞれが、それぞれの井戸から、それぞれの水を汲めるようにしよう。もし井戸の水が枯れてしまったら、一緒に大きな水脈を探し出そう。他の井戸を埋めたり、少ない水を奪い合うのはやめよう」。もうすぐ春。田んぼに水が引かれ、蛙の合唱が始まる。あいつら、もしかしたらそんな事を歌っているのかもしれないと思うのは、人間の自由だろう。


豚飼雑感 | 21:35:28 | トラックバック(0) | コメント(0)
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